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2023/01/02
八戸LNGターミナルにマレーシアから到着したタンカー=2015年1月8日
「欧州の脱ロシア化で液化天然ガス(LNG)価格はまだ高止まりする」。そう話すのは、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の白川裕調査役だ。ロシアによるウクライナ侵攻後、世界の天然ガス、LNG市場に激震が走った。価格は高騰し、今後の調達にも不透明感が漂う。日本が輸入するLNGの価格や、ロシアの影響を強く受ける欧州の動向について、白川調査役に聞いた。【毎日新聞経済プレミア】
日本が輸入するLNGの価格が上がっています。
◆日本のLNGの平均輸入価格は、2022年10月は20.8ドル(100万BTU=英国熱量単位=当たり)でした。ウクライナ侵攻直前の13.8ドル(22年1月)から50%上がっています。この2年間で最も安かったのは21年3月の7.5ドルで、そこからだと3倍弱になっています。 日本はLNGの7~8割を長期契約で買い、残りの2~3割を日々変動するスポット市場で買っています。この二つを合計した価格が平均輸入価格です。
◇スポット価格は7~8倍に
スポット価格はもっと上がっていますね。
◆スポット価格は世界情勢や需給によって大きく動きます。日本が買うスポットLNGの指標価格はJKM(ジャパン・コリア・マーカー)です。日本、韓国、中国、台湾など北東アジアにLNG船で運ばれてくる入着ベースの価格です。 JKMはウクライナ侵攻直後の22年3月7日に84.8ドルの史上最高値をつけました。その後上下動を繰り返していますが、現在は38ドル程度です。侵攻前の数年間の3月の平均価格は5ドル程度ですので7~8倍になっています。
日本はLNGをどれくらい、どの国から買っているのでしょうか。
◆21年の日本の輸入量は7435万トンで、上位はオーストラリア36.0%、マレーシア13.5%、カタール12.1%、アメリカ9.5%、ロシア8.9%です。
JERA(東京電力と中部電力が火力発電と燃料事業を統合した会社)がウクライナ侵攻前の21年12月、カタールのLNGの長期契約を延長しませんでした。この影響は大きいでしょうか。
◆あの時点では、契約を延長しなかったのは仕方なかったと思います。ウクライナ侵攻は誰も予想できませんでした。脱炭素の動きや、原発再稼働がどうなるかも不確定な中で、長期契約を継続することは逆にリスクがありました。 JERAは日本のLNG輸入量の約40%を購入しています。JERAのカタールとの契約は約500万トンで、今後は他の長期契約、またはスポット市場で買うことになります。多少影響はありますが、日本全体では大きな問題ではありません。
◇欧州のLNG価格は日本より高い
LNG価格は今後どうなると見込まれますか。
◆まだまだ高止まりする可能性が大きいと思います。ウクライナ侵攻で、欧州はエネルギーの「脱ロシア」を目指しています。欧州は、ロシアからパイプラインで買っていた天然ガスをLNGに切り替えていくため、当然LNGの価格に跳ね返ります。 ロシアからドイツへ輸出するパイプライン「ノルドストリーム」は22年8月に停止しました。さらに9月には謎の爆破事件があり、大きな穴があいてしまっています。その他にも何本かロシアから欧州向けのパイプラインがありますが、輸入量は急速に減っています。 欧州が輸入するLNGのスポット価格の代表的な指標は「オランダTTF(The Title Transfer Facility)」です。直近では40ドル(100万BTU当たり)まで上がっています。このTTFの上昇に引っ張られて、日本が買う価格のJKMも上がっていくことが予想されます。
欧州のこの冬の天然ガスは大丈夫なのでしょうか。
◆ウクライナ侵攻後も、量が減ったとはいえロシアからパイプラインで入っていましたし、22年の9~11月は、欧州は非常に暖かかったので使う量が減って、備蓄が進みました。貯蔵在庫の充塡(じゅうてん)率は95.5%(22年11月15日現在)で例年より高く、この冬は乗り切れると思います。 ただ、23年以降は厳しいと思います。ロシアからの天然ガスはほぼゼロになりますし、LNGは受け入れ能力がほぼ上限に達しているため、簡単には増やせません。例年、冬が終わった3月末ごろに最も備蓄が減りますが、そのころにどれくらい備蓄が残っているかが問題です。
◇欧州の脱ロシアには10年かかる
欧州のLNGへの切り替えはうまくいくのでしょうか。
◆簡単ではありません。欧州の天然ガスは、域内生産と域外からの輸入で年間4億トンを必要としていますが、このうち1億トン強をロシアからパイプラインで買っていました。これをLNGに転換していきます。 問題は、液体のLNGを気体に戻す受け入れ基地の増設です。欧州はいま「浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)」を増やして、受け入れ基地にしようとしています。FSRUとは、LNG輸送船に再ガス化能力を付けた設備で、港に停泊させて基地にします。陸上につくるよりはるかに短い時間で稼働できます。 既存の陸上受け入れ基地に加えて、いま欧州には4隻のFSRUがありますが、世界中からかき集めて追加の10隻を確保しました。ロシアに頼らずに十分な天然ガスを輸入するには、さらに20隻が必要です。しかし、発注してもすぐに建造できるわけではありません。
欧州がロシア依存から抜け出すにはまだ時間がかかりそうです。
◆10年はかかると見ています。LNGは輸出する側も液化施設を増設しなければならず、これには4~5年かかるでしょう。FSRUも年間3隻程度増やしていけたとしても、脱ロシアには10年かかる計算です。 LNGは、生産から最終目的地でガスとして使えるようにするまで一連の設備が必要です。ガス生産、液化、輸送、再ガス化、パイプラインなど各事業者がみな利益を出せるようにしなければ、サプライチェーンを維持できません。10年の間に政治情勢が変わるリスクもあり、設備投資の判断は簡単ではありません。天然ガス、LNGの輸出入は常に難しい問題を抱えているのです。【聞き手・平野純一】
◇白川裕氏略歴 しらかわ・ゆたか 1964年新潟市生まれ。88年早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻修士課程修了、東京ガス入社。LNG受け入れ基地管理、LNG調達・契約交渉などに携わる。米エール大学MBA。ニューヨーク、シンガポール駐在を経て、2019年JOGMEC出向。
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